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最高裁判所第二小法廷 昭和50年(オ)668号 判決

主文

理由

上告代理人江谷英男、同藤村睦美の上告理由第一点ないし第三点について(略)

同第四点について

民法九四条二項にいう第三者は、虚偽の意思表示の当事者又はその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい(最高裁昭和四〇年(オ)第二〇四号同四五年七月二四日第二小法廷判決・民集二四巻七号一一一六頁、昭和四一年(オ)第一二三一号、第一二三二号同四二年六月二九日第一小法廷判決・裁判集民事八七巻一三九七頁)、不動産の共同相続人の一部が、相続により取得した共有持分を放棄する意思がないのに、他の共同相続人らのみにおいて相続した旨の一部不実の所有権移転登記を経由したため、右不実の部分につき民法九四条二項が類推適用される場合に、右登記を受けた共同相続人は、右登記を承諾していないときであつても、右登記によつて表示された利益を直接享受する者にすぎないから、右にいう第三者にあたらないというべきである。これと同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができ、これに所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊 裁判官 本林 譲)

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